AI時代、情シスはどう戦うべきか ~第3回 押し寄せる「Patch Wave」とどう向き合うか AI時代の新しいパッチ管理~

パッチ管理の常識が変わり始めている

「今月のWindows Updateは適用しましたか?」

情報システム部門(情シス)にとって、この確認は長年変わらない日常業務でした。

毎月公開されるWindows Updateを適用し、必要に応じて再起動を行う。サーバやクライアントPCの更新状況を確認し、「今月も無事に更新が終わった」と一安心する。このような運用を続けている企業も多いでしょう。

もちろん、この運用が間違っているわけではありません。

しかし、AIの急速な普及によって、サイバーセキュリティを取り巻く環境は大きく変化しています。

近年、生成AIは文章作成だけでなく、ソースコードの解析や脆弱性調査にも活用されるようになりました。攻撃者だけでなく、ソフトウェアベンダーやセキュリティ研究者もAIを利用して、これまで以上のスピードで脆弱性を発見・解析しています。

その結果、企業に届けられるセキュリティ更新プログラム(パッチ)の数は増加し続けています。

Windowsだけではありません。

Webブラウザ、Microsoft 365、Adobe製品、Zoom、7-Zip、VPNクライアント、PDF閲覧ソフトなど、業務で利用するアプリケーションのほとんどが、頻繁に更新される時代になりました。

つまり、情シスが管理すべき対象は、OSだけではなく、数十から数百種類のソフトウェアへと広がっています。

さらに、AIによる脆弱性発見の高速化によって、ベンダーはこれまで以上の頻度で修正パッチを公開するようになりました。

このように、企業へ大量の更新プログラムが次々と押し寄せる状況を、Heimdalでは「Patch Wave(パッチウェーブ)」という言葉で表現しています。

Patch Waveとは、単にパッチの数が増えることではありません。

「AI時代によって、脆弱性の発見から修正までのサイクルが加速し、企業が対応すべき更新が絶え間なく押し寄せる時代」を意味しています。

これからの情シスに求められるのは、すべてのパッチをできるだけ早く適用することではありません。

大量のパッチの中から、本当に優先すべき更新を見極め、安全かつ効率的に運用していくことです。

パッチ管理の考え方そのものが、大きな転換点を迎えています。


図1(Patch Waveとは何か)は、AI時代に押し寄せる「Patch Wave」を表しています。

なぜPatch Waveは起きるのか

では、なぜPatch Waveは起きるのでしょうか。

その背景には、AIの進化だけではなく、ソフトウェア開発やセキュリティ対策そのものの変化があります。

以前は、新しい機能や修正プログラムは、数か月から半年単位でリリースされることも珍しくありませんでした。しかし現在では、クラウドサービスやSaaSの普及により、ソフトウェアは短いサイクルで継続的にアップデートされることが当たり前になっています。

それに伴い、脆弱性の発見から修正までのスピードも大きく向上しています。

特に近年は、AIを活用したソースコード解析や脆弱性診断が急速に進化しています。ソフトウェアベンダーやセキュリティ研究者は、AIを利用して従来よりも短時間で問題点を発見できるようになり、新たな脆弱性が次々と公開されています。

これは決して悪いことではありません。

脆弱性が早期に発見されることで、攻撃者に悪用される前に修正プログラムが提供される可能性も高まります。

一方で、企業の情シスにとっては、新たな課題が生まれます。

脆弱性が見つかるたびに修正パッチが公開され、そのたびに影響調査や検証、展開計画を立てなければならないからです。

しかも、その対象はWindowsだけではありません。

ブラウザ、PDF閲覧ソフト、Microsoft 365、Adobe製品、Zoom、VPNクライアントなど、多くの業務アプリケーションが頻繁に更新されています。

つまり、AIによって増えているのはサイバー攻撃だけではなく、「対応すべき更新プログラム」そのものなのです。

さらに、企業では数百台から数千台の端末が稼働しています。

すべての端末に対して、すべての更新プログラムを即座に適用することは現実的ではありません。業務への影響を考慮しながら検証端末で事前確認を行い、段階的に展開するなど、安全性と業務継続を両立した運用が求められます。

AI時代のパッチ管理が難しくなっている理由は、「パッチが増えた」ことだけではありません。

「増え続けるパッチを、限られた時間と人員で、どのように安全かつ効率的に運用するか」

これこそが、Patch Wave時代に情シスが向き合うべき新しい課題なのです。

Heimdalでは、このような状況を「Patch Wave」と捉えています。

重要なのは、パッチを数多く適用することではありません。資産を正確に把握し、脆弱性のリスクを可視化し、その結果をもとに優先順位を付けてパッチを適用することです。

つまり、資産管理・脆弱性管理・パッチ管理を連携させることが、AI時代のパッチ管理に求められる新しい考え方だと言えるでしょう。

次章では、Windows Updateだけでは十分とは言えない理由について見ていきます。


図2(Patch Waveはなぜ起きるのか?)は、Patch Waveの発生原因を説明しています。

Windows Updateだけでは守れない理由

ここまで見てきたように、AI時代では企業へ届けられるパッチの数が急速に増えています。

しかし、もう一つ見落としてはならない変化があります。

それは、攻撃者が狙う対象そのものが変化していることです。

かつては、Windows OSの脆弱性が攻撃の中心でした。

もちろん現在でもOSの更新は非常に重要ですが、それだけでは十分とは言えません。

現在、企業のPCには数十種類、多い場合には100種類を超える業務アプリケーションがインストールされています。

例えば、

  • Google Chrome
  • Microsoft Edge
  • Adobe Acrobat Reader
  • Microsoft 365
  • Zoom
  • 7-Zip
  • Java
  • VPNクライアント

など、多くのソフトウェアが日常業務を支えています。

これらのソフトウェアにも、毎月のように脆弱性が公開され、修正パッチが提供されています。

攻撃者にとって重要なのは、「Windowsなのか、アプリケーションなのか」ではありません。

侵入できる脆弱性が存在するかどうかです。

実際、多くのランサムウェアやマルウェアは、OSだけではなく、ブラウザやPDF閲覧ソフト、VPNソフトウェアなどの既知の脆弱性を悪用して侵入するケースが数多く報告されています。

そのため、Windows Updateだけを確実に実施していても、サードパーティアプリケーションの更新が遅れていれば、攻撃を受けるリスクは残ったままになります。

さらに、企業では利用しているソフトウェアの種類やバージョンが部署や端末ごとに異なります。

情シスは、

  • どの端末に、
  • どのソフトウェアが導入され、
  • どのバージョンが利用され、
  • どの脆弱性を抱えているのか

を把握した上で、更新計画を立てる必要があります。

つまり、これからのパッチ管理は、単なる「更新作業」ではありません。

資産を把握し、脆弱性を可視化し、その情報をもとにパッチを適用する。

この一連のプロセスがあって初めて、適切なパッチ管理が実現できます。

Heimdal パッチ脆弱性管理でも、この考え方を重視しています。

Windows OSだけでなく、多数のサードパーティアプリケーションを一元管理し、端末にインストールされているソフトウェアや脆弱性情報を可視化することで、Patch Wave時代に必要なパッチ管理を支援します。

次章では、こうした考え方を踏まえ、AI時代に求められる新しいパッチ管理のあり方についてご紹介します。


図3(Windows Updateだけでは守れない理由)では、Windows Updateだけでは守れない管理対象についてまとめています。

AI時代のパッチ管理とは

ここまで見てきたように、AI時代の情シスは、これまで以上に多くのパッチへ対応しなければならない時代を迎えています。

しかし、だからといって「公開されたパッチをすべて最優先で適用する」ことが正しい運用とは限りません。

企業には、業務システムや基幹システムなど、停止できないシステムが数多く存在します。

パッチ適用による業務影響やアプリケーションの互換性を考慮すると、十分な検証を行わずに一斉展開することは、大きなリスクにつながる可能性があります。

つまり、AI時代に求められるパッチ管理とは、「できるだけ早く適用すること」ではなく、

「リスクを把握し、優先順位を付け、安全に適用すること」

なのです。

近年では、公開されたすべての脆弱性を同じ優先度で扱うのではなく、リスクに応じて優先順位を判断する考え方が一般的になっています。

例えば、脆弱性の深刻度を示すCVSS(Common Vulnerability Scoring System)だけではなく、実際に悪用される可能性を予測するEPSS(Exploit Prediction Scoring System)や、米国CISAが公開しているKEV(Known Exploited Vulnerabilities)なども参考にしながら、優先順位を判断する企業が増えています。

さらに重要なのは、それらの情報に加え、

  • 自社でそのソフトウェアを利用しているか
  • どの端末にインストールされているか
  • 業務への影響はどの程度か

といった、自社環境に応じた情報を組み合わせて判断することです。

そのためには、パッチ管理だけでは十分ではありません。

まず、自社にどのような資産が存在するのかを把握し、その資産にどのような脆弱性が存在しているのかを可視化する必要があります。

そして、その情報をもとに優先順位を判断し、検証端末で動作確認を行ったうえで、問題がなければ一部の端末から順番に展開していく。このような段階的な運用によって、安全性と業務継続の両立が可能になります。

Heimdal パッチ・脆弱性管理では、この一連の流れを一つのプラットフォーム上で実現します。

資産管理によって端末やインストール済みソフトウェアを把握し、脆弱性管理によってOSやサードパーティアプリケーションのリスクを可視化します。その情報をもとに、Windows OSだけでなく、多数のサードパーティアプリケーションに対してパッチを配布・適用することができます。

Update Rings(更新リング)を利用することで、検証端末から本番環境へと段階的に展開し、問題発生時の影響を最小限に抑えた運用が可能です。

さらに、大規模な環境では、「どの端末から更新するか」だけでなく、「どの更新を優先して配信するか(Priority Update)」という考え方も重要になっています。

例えば、実際に悪用が確認されている脆弱性(KEV)や、EPSSなどで悪用される可能性が高いと評価された脆弱性に対する更新プログラムを優先的に展開し、それ以外の更新は計画的に適用することで、限られた運用リソースでも効率的なパッチ管理を実現できます。

AI時代のパッチ管理では、「優先順位を判断すること」と「その優先順位に従って更新を展開すること」の両方が、これまで以上に重要になっています。

AI時代のパッチ管理とは、単なる更新作業ではありません。

「資産管理」「脆弱性管理」「パッチ管理」を連携させ、リスクを継続的に評価・管理する運用へと進化しています。

Patch Waveの時代だからこそ、情シスには「どのパッチを適用するか」だけでなく、「なぜ適用するのか」「どの順番で適用するのか」を判断する力が、これまで以上に求められています。


図4(AI時代のパッチ管理サイクル)では、パッチ管理のサイクルをまとめています。

まとめ

AIの進化は、サイバー攻撃だけでなく、脆弱性の発見やソフトウェア開発のスピードにも大きな変化をもたらしています。

その結果、企業にはこれまで以上に多くの更新プログラムが届けられるようになり、情シスは「Patch Wave」と呼ばれる新たな課題に直面しています。

こうした状況では、Windows Updateだけを適用していれば安心という時代は終わりを迎えつつあります。

OSだけでなく、ブラウザやMicrosoft 365、PDF閲覧ソフト、VPNクライアントなど、多様なソフトウェアを継続的に管理し、それぞれの脆弱性を把握したうえで、適切なタイミングで更新を適用していくことが重要です。

そのためには、パッチ管理を単独で考えるのではなく、

  • 資産管理
  • 脆弱性管理
  • パッチ管理

を連携させた運用へと発想を転換する必要があります。

AI時代に求められるパッチ管理とは、

「より多くのパッチを適用すること」ではありません。

「大量のパッチの中から、本当に優先すべき更新を見極め、安全な状態を継続的に維持すること」

これこそが、Patch Wave時代に求められる新しいパッチ管理の考え方です。

図5(従来のパッチ管理 vs AI時代のパッチ管理)では、AI時代のパッチ管理についてまとめています。

Heimdalでは、この考え方をもとに、資産管理・脆弱性管理・パッチ管理を一つのプラットフォームで提供し、Patch Wave時代に対応する運用を支援しています。

次回はいよいよシリーズ最終回です。

ここまでご紹介してきた「見える化」「パッチ管理」に加え、「権限管理(PEDM)」や統合プラットフォーム、さらにAIアシスタント「Wingman AI」などを活用した、AI時代の情シスに求められる統合運用についてご紹介します。

Heimdal セキュリティスイートを試してみませんか?

AI時代のパッチ脆弱性管理は、Heimdalの統合プラットフォームで実現。
無料トライアル受付中です。

Heimdal セキュリティスイート の製品ページを見る

参考文献・出典

本記事はここまでとなります。
もし気になった点やご質問などあれば、お気軽にお問い合わせください。

こんな記事も読まれています

最新記事

おすすめ記事

  1. インターネット回線速度をグラフで見える化!Checkmk×Speedtest CLI活用術

  2. 【初心者向け Wazuh 第2弾】Windows&Linuxにエージェントを導入してログ収集を開始する方法

  3. デスクトップ仮想化の 4 通りの構成と Windows 11 マルチセッション

製品カテゴリー

その他の情報

TOP