ネットワーク監視をしていて、こんな経験はないでしょうか。
「監視画面では機器は正常。でもネットワークが遅い」
「トラフィックが急増している。でも、誰が何の通信をしているのか分からない」
「複数拠点を監視しているが、拠点間で実際にどのような通信が発生しているのか把握できていない」
一般的なSNMP監視では、ネットワーク機器の死活状態やCPU、メモリ、インターフェースのトラフィック量などを監視できます。
一方で、「その帯域を誰が、何の通信で使っているのか」まで調べようとすると、SNMPだけでは十分ではありません。
そこで有効になるのが、実際にネットワークを流れるパケットや、NetFlow / sFlow / IPFIXなどのフローデータを利用したネットワークトラフィック分析です。
このネットワークトラフィック分析を行うソフトウェア「ntopng」の最新バージョン ntopng 7.0 がリリースされました。

今回の7.0では、AIによるトラフィック分析、多拠点ネットワークの可視化、Observability、Wazuh連携、BGP/BMPなど、大幅な機能強化が行われています。
そもそも ntopng とは?
ntopngは、ネットワーク上を流れる通信をリアルタイムに可視化・分析するソフトウェアです。
パケットを直接取得して分析するほか、NetFlow / sFlow / IPFIXなどのフローデータを利用した分析にも対応しています。
例えば、
- どのホストが通信量を多く使用しているか
- どのアプリケーションが利用されているか
- 誰と誰が通信しているか
- いつ通信量が増加したか
- 過去にどのような通信が発生していたか
といったことを調査できます。
SNMPによる監視が「ネットワーク機器の状態を見る」ことを得意としているのに対して、ntopngは「ネットワーク上で実際に発生している通信を見る」ことを得意としています。
どちらか一方ではなく、目的に応じて組み合わせることで、ネットワークの状態をより詳しく把握できます。
ntopng 7.0 最大の注目点は「AIによるトラフィック分析」
ntopng 7.0で特に注目したいのが、新しいAI分析機能 nAnalyst です。

ネットワーク分析では、大量の通信データから必要な情報を探し出す必要があります。
ntopngにはこれまでも豊富な検索・フィルタ・可視化機能がありましたが、ネットワークに詳しい担当者自身が条件を指定して分析することが基本でした。
nAnalystでは、この分析にAIを利用できます。
ライブ/過去のフローやアラートに対してチャット形式で問い合わせることができ、自然言語を使った分析が可能になります。
さらにAI Dashboardや、複数ステップでデータを分析するAgentic Loopなども追加されています。つまり、「データを見せる」だけではなく、「大量のデータから何が起きているのかを調べる」
ところまでAIを活用しようとしているのが、ntopng 7.0の大きな変化です。
nAnalystはEnterprise M以上で利用できます。
多拠点ネットワークをまとめて見る「Sites」
企業ネットワークでは、本社だけを監視すればよいというケースは少なくなっています。
例えば、
本社
├ 東京拠点
├ 大阪拠点
├ 名古屋拠点
└ データセンター
といった複数拠点をまとめて管理する必要があります。
ntopng 7.0では、新たに Sites 機能が追加されました。

Sitesでは、ネットワーク、Exporter、ホストを物理的または論理的な「拠点」にまとめて管理できます。
各Siteには専用Dashboardが用意され、
- SNMP
- Live Flows
- Hosts
- Assets
- Exporters
- Top Items
- 配下のネットワーク
などを確認できます。
さらにGeomap、Site間の接続、Matrix / Heatmap、Site単位のTimeseriesなどにも対応しました。
特に興味深いのが、Historical FlowにClient Site IDとServer Site IDが保存される点です。
これにより、
「どの拠点から、どの拠点へ、どれくらい通信しているのか」
という「拠点」を軸にした通信分析が可能になります。
全国・海外に多数の拠点を持つ企業では、非常に興味深い機能ではないでしょうか。
ClickHouse を利用した Observability も強化
ntopng 7.0ではClickHouseを利用する新しいTimeseries Engineも導入されました。
High-Resolution Counterではサブ秒レベルの粒度に対応し、従来のHR Dashboardは「Observability」に名称変更されています。
ntopngではリアルタイムの通信を見るだけでなく、ClickHouseへフローデータを蓄積することで、
「昨日この時間に何が起きていたのか」
「障害発生時にどの通信が増えていたのか」
「特定ホストが過去にどこと通信していたのか」
といった過去データの分析にも利用できます。
今回の7.0では、この「蓄積して分析する」という方向性がさらに強化されています。
Wazuh との連携で「ネットワーク」と「ホスト」を関連付ける
セキュリティ面では、オープンソースXDR/SIEMプラットフォーム Wazuh とのネイティブ統合が追加されました。
WazuhのアラートをClickHouseへ収集し、ntopng上の専用画面から確認できます。
これは非常に興味深い組み合わせです。ntopngが得意なのは、ネットワークで何が起きているのかを見ること。
一方、Wazuhでは、サーバやエンドポイントで何が起きているのかを見ることができます。
この2つの情報を組み合わせることで、ネットワーク側の通信状況とホスト側のセキュリティイベントを関連付けた分析が可能になります。さらにnAnalystもWazuh Alertsと連携します。
Wazuh統合についてもEnterprise M以上が対象です。
BGP/BMP にも対応
ntopng 7.0では、BGP/BMPの可視化も大幅に強化されました。
Looking Glass、RPKI Validation、Best Path、Next Hop、Prefix Change Alertなどに対応しています。
さらにBGP情報はLive FlowおよびHistorical Flowの詳細にも表示されます。
これまでの
「通信を見る」
というntopngの世界に、
「その通信がどのようなルーティング情報と関係しているのか」
という視点が加わったことになります。
ISP、データセンター、大規模ネットワークなどでは特に注目したい機能です。
セキュリティ面も大幅に強化
ntopng 7.0では製品そのもののセキュリティも強化されています。
OpenID ConnectによるSSO、MFA、Passkey、REST APIに対するX-API-Key / Bearer Token認証などに対応しました。
また、HTTPSがデフォルトで有効になり、ZMQ通信についてもデフォルトで暗号化されます。
EU Cyber Resilience Act(CRA)への対応も意識したアップデートとなっています。
既存環境をntopng 7.0へアップグレードする場合には、こうした通信・認証方式の変更についても事前確認をおすすめします。
「機器を見る」から「通信を見る」、そして「AIで分析する」へ
ネットワーク監視ではSNMPが今後も重要であることに変わりありません。
しかし、ネットワークが複雑化するにつれて、「機器が正常かどうか」だけでは原因を判断できないケースも増えています。
そこで必要になるのが、「実際にどのような通信が発生しているのか」という視点です。
そしてntopng 7.0では、さらにその先となる「大量の通信データをAIで分析する」
という機能が加わりました。
SNMPで「機器」を見る。
パケットやNetFlow / sFlow / IPFIXで「通信」を見る。
そしてAIを活用して「なぜ?」を調べる。
ntopng 7.0は、ネットワーク監視・トラフィック分析の可能性をさらに広げるアップデートと言えそうです。
ジュピターテクノロジーでは、ntopngの評価、デモ、ライセンス、ネットワークトラフィック分析に関するご相談を承っています。
「SNMP監視はしているが、通信の詳細までは見えていない」
「NetFlowを取得しているが、十分に活用できていない」
「多数の拠点の通信をまとめて可視化したい」
「AIをネットワーク分析にどう活用できるのか見てみたい」
といった課題をお持ちの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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