はじめに ~なぜ、社長の名前が詐欺に使われるのか~
「自分は指示していないのに、社長名義で送金が行われていた」
これは、実際に被害を受けた企業の経営者が口にした言葉です。近年、中小企業を中心に、社長や役員になりすまして指示メールを送り、LINEへ誘導し、送金指示を行う詐欺が急増しています。被害額は数百万円から、場合によっては数千万円に及ぶこともあります。そして多くの場合、経営者本人は「自分の名前が攻撃に使われるまで」その事実に気づいていません。
本記事では、なぜ今「社長という立場」が狙われているのか、そして経営者として何をどのように守るべきなのかを整理します。
なぜ今、中小企業が狙われているのか
この詐欺の主な標的は、大企業ではなく中小企業です。その理由は明確です。
- 社長と社員の距離が近く、指示が通りやすい
- IT担当者が専任ではなく、対策が後回しになりやすい
- LINEなどの個人ツールが業務で使われている
- 「社長案件」は例外として処理されやすい
攻撃者は、これらの特徴をよく理解しています。
そのため、ウイルスや不正プログラムではなく、「経営者の権限と信頼」そのものを攻撃に使うのです。
被害は、社員のミスではなく「経営リスク」
このタイプの被害で、後からよく聞かれる言葉があります。
「なぜ確認しなかったのか」
「なぜ疑わなかったのか」
しかし、社員が「社長の指示」を疑えなかったこと自体は、決して異常ではありません。むしろ、指示命令系統が正しく機能していたとも言えます。
問題は、社員の判断力ではありません。
社長の名前が“勝手に使えてしまう状態”を放置していたことです。
経営者の名前と立場は、会社にとって最も強い「権限」です。その権限が、第三者によって簡単に利用できる状態であれば、被害はいつ起きても不思議ではありません。
これは、社員教育の問題ではなく、経営責任の範囲にあるリスクです。
LINE誘導型詐欺は、なぜここまで成功するのか
詐欺の流れは、おおむね次のようになります。
- 社長の名前でメールが届く
- 「至急」「極秘」などで判断を急がせる
- 「社内的にまずい」「メールは避けたい」などの理由でLINEへ誘導
- LINE上で複数人を装い、自然な会話を演出
- 具体的な口座情報・送金指示が出る
ここで重要なのは、攻撃者が最初から「LINEで騙す」つもりだという点です。
メールはあくまで入口であり、社内のチェックやセキュリティを避けるための踏み台にすぎません。だからこそ、「怪しいメールに注意しましょう」だけでは、防ぎきれないのです。
多くの経営者が知らない事実
― メールの「差出人名」は簡単に偽装できる
多くの方が見落としているのが、メールの差出人名(表示名)です。
メールでは、
- 表示される名前
- 実際の送信元メールアドレス
は、別々に設定できます。
つまり、社長本人と無関係なメールアドレスからでも、表示上は「社長の名前」でメールを送ることが可能です。
受信トレイに「社長の名前」が表示されていれば、人はそれを前提に判断してしまいます。忙しい業務の中で、毎回メールアドレスの細部まで確認することを、現場に求めるのは現実的ではありません。
社長の名前を守る、という考え方
ここで重要なのは、「社員にもっと注意させる」ことではありません。
社長の名前が、不正に使われない仕組みを作ることです。
具体的には、
- 「社長の名前」は
- あらかじめ決めた正しいメールアドレスから来た場合のみ許可し
- それ以外のアドレスから社長名を名乗るメールは、隔離またはブロックする
という考え方です。
これは、いわゆる表示名なりすまし対策と呼ばれるもので、社長や役員の権限を技術的に守るための、非常に有効な手段です。
この対策を行うことで、「社長を装った入口のメール」自体を大きく減らすことができ、その先にあるLINE誘導や送金指示まで進まれる可能性を抑えることができます。
中小企業が取るべき、現実的な対策
経営者として、最低限押さえておきたいポイントは多くありません。
- 社長・役員の名前が勝手に使われない仕組みを用意する
- 送金・支払いは、必ず別経路で再確認するルールを固定する
- LINEなど、責任の所在が曖昧になる手段に判断を委ねない
重要なのは、「完璧な対策」ではなく、被害を未然に止められるラインまで引き上げることです。
中小企業向けには、表示名なりすまし対策を含め、無理なく導入できるメールセキュリティ製品も存在します。自社の環境で何ができていて、何ができていないのかを、一度整理する価値は十分にあります。
「うちは大丈夫だろうか?」と思われた方へ
この手の対策は、被害に遭ってから整えても手遅れです。
社長や役員の名前が、現在どのように使われているのかは、内部の人ほど把握できていないケースが少なくありません。
現在、
- 社長なりすまし対策の可否確認
- 表示名詐欺への対応状況チェック
- 中小企業向けの現実的な対策案
について、個別相談・メールセキュリティ製品デモを行っています。会社と社員を守るために、一度立ち止まって確認してみてください。
お問合せの際、製品名は、「サイバーセキュリティ」をご選択ください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


