この記事では、ネットワーク監視ソフトウェア「PRTG Network Monitor」のクラスター機能を使用した冗長化の仕組みと、設定方法のリンク先を紹介します。
文:ジュピターテクノロジー やすだ
※この記事に掲載されている商品またはサービスの名称等は、各社の商標または商標登録です。
はじめに
現在では、ビジネスやサービスがネットワークに依存するのが当たり前となっています。ネットワーク監視システムが停止すると、障害の検知が遅れ、大きな影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐためには、監視システムの冗長化が不可欠です。
当社が取り扱うネットワーク監視ソフトウェア「PRTG Network Monitor」(以下、PRTG)は、クラスター機能で冗長化を実現できます。フリー版でも利用可能です。
PRTGクラスターの概要
PRTGクラスターは、2台以上のPRTGを組み合わせて高可用性の監視システムを構築します。本記事では、2台のPRTGでクラスター構成を紹介します。※フリー版の場合は、2台までのクラスターが上限です。
PRTGクラスターの概要は次のようになります。
- ライセンス:
標準機能のため、追加のライセンスは必要ありません。フリー版でも使用できます。 - 構成:
1台の「マスターノード」と1台以上の「フェイルオーバーノード」で構成されます。 - 動作:
クラスターの各ノードは「アクティブ-アクティブ」で機能し、各ノードがそれぞれ監視を実行します。一部のノードがダウンした場合でも監視が停止しません。 - データ保存と通知:
取得したデータは各ノードがそれぞれ保存します。ただし、「設定の変更」と「通知実行」はマスターノードのみが担当します。マスターの設定がフェイルオーバーノードへ自動で同期されます。 - 通信:
ノード間はTCPで相互通信します。キープアライブや設定の同期を行います。
PRTGクラスターの要件
ここではPRTGクラスター機能の要件を紹介します。
- コアサーバー:
2台の個別のPRTGコアサーバーを用意します。 - ライセンスキー:
2台のコアサーバーを同じライセンスキーでアクティベートします。 - コアサーバーのハードウェア:
2台のコアサーバーは同程度のハードウェア性能を持っている必要があります。 - ポート:
2台のPRTGコアサーバーがTCPポート23570(デフォルト設定)を使用して双方向に通信可能である必要があります。
正常時のクラスター動作
正常時のクラスター動作は次のようになります。
- 設定管理:
マスターノードで設定し、他のノードにリアルタイムで同期します。 - 監視:
各ノードが同じ設定で監視し、結果をそれぞれ保存します。 - 通知:
障害検知時の「通知」はマスターノードのみが実行します。これにより、障害が発生しても各ノードから通知が大量に送信されることはありません。 - 監視結果確認:
各ノードのPRTGウェブインターフェイスで確認可能です。フェイルオーバーノードでは読み取り専用で確認できます。 - バージョンアップ:
いずれかのノードがバージョンアップすると、他のノードへも自動的にバージョンアップがデプロイされます。
障害時のクラスター動作
各クラスターノードに障害が発生した場合の動作は次のようになります。
フェイルオーバーノードがダウン
フェイルオーバーノードがクラスターから切断されても(例えば、ハードウェアやネットワーク障害が原因の場合でも)、マスターノードは正常に動作し続けます。
マスターノードがダウン
マスターノードがクラスターから切断されると、フェイルオーバーノードが仮マスターノードに昇格し、クラスターの管理と通知実行を担当します。
マスターノードが復旧し、クラスターに再接続すると、フェイルオーバーノードは元の役割に戻ります。
監視データは各ノードがそれぞれ保存しているため、障害中のマスターノードではデータが欠損します。障害中の監視データはフェイルオーバーノードでのみ確認することができます。
クラスターの設定方法
設定方法の詳細は、次のPRTG専門サイトの資料をご確認ください。弊社のPRTG専門サイトではこれ以外にも様々な情報と資料を公開しています。
なお、フリー版を使用する場合は、2台のフリー版PRTGをあらかじめ用意してください。
フリー版のインストール方法については、次のブログ記事をご参照ください。
PRTG Network Monitor – 100センサーフリー版で無料ネットワーク監視
クラスターの注意
- 監視データの欠損:
クラスターノードが停止している間、そのノードは監視データを収集できません。このため、停止したノードのデータは欠損します。他のノードではその期間のデータを確認できまます。ただし、データの欠損を他のノードのデータで補完する機能はありません。 - バージョンアップ時の停止:
バージョンアップ時は、各ノードの監視機能が一時的に停止します。また、環境によっては両ノードで監視が停止する時間が発生する可能性があります。 - 冗長化できないセンサー:
Flow、SNMPトラップ、Syslogセンサーはクラスター機能では使用できません。これらのセンサーは、マスターノードのみで監視するか、リモートプローブを使用して監視する必要があります。
まとめ
PRTG Network Monitorのクラスター機能により、ネットワーク監視の冗長化を実現できます。これにより、監視システムの安定性と可用性が向上し、ビジネスやサービスへの影響を最小限に抑えることができます。
簡単な設定で高可用性の監視システムを構築でき、フリー版でも使用可能です。ネットワーク監視を強化したい方には、PRTG Network Monitorが最適な選択肢となります。