この記事では、ネットワーク監視ソフトウェア「PRTG Network Monitor」(以下、PRTG)を使用して、ネットワーク機器のポート(インターフェイス)ごとの帯域幅の使用状況のレポートを作成する方法を紹介します。
帯域使用状況の上位リストや、時系列グラフと表を含むレポートを作成できます。
はじめに
PRTGはネットワーク機器のポート(インターフェイス)ごとの帯域幅使用状況をかんたんに監視、可視化できます。
この記事では、監視結果をPRTGでレポートとして出力する方法を紹介します。
PRTGで帯域幅の使用状況のレポートを作成するメリット
監視からレポート作成までGUIで完結
PRTGは、監視からレポート作成までGUI操作で完結します。
日時、月次、週次のレポートを自動作成し、PDFやCSVで保存、メールに添付して送信することも可能です。
テンプレートでかんたん作成
レポートのテンプレートが用意されており、数クリックでレポートを作成できます。
帯域幅の使用状況を監視する
監視方法は別の記事で紹介しています。最初にこちらをご覧ください。
ネットワークアセスメント入門:PRTGで帯域幅を見える化
レポートのサンプル
PRTGで作成できる帯域幅の使用状況のレポートを紹介します。
上位 100 最多/最少帯域使用センサー
PRTGで監視しているポートの帯域幅使用状況が高い順と低い順で、それぞれトップ100を表示するレポートです。


PRTGではポートごとに「センサー」が帯域を監視するため、センサー=ポートになっています。
トップリストは期間内(この例では一か月)の帯域幅使用状況の平均値で作成され、カラム「平均」でソートされています。
生データを5分間隔で平均化(デフォルト設定)したものを使用し、各ポートの最小値と最大値も表示されます。
値はすべてセンサーのプライマリチャネルの値です。デフォルトは「合計」チャネルです。
センサー、チャネルとプライマリチャネルについてはこちらをご参照ください。
ネットワークアセスメント入門:PRTGで帯域幅を見える化
ポートごとの帯域幅の使用状況レポート
監視しているポート(インターフェイス)ごと、つまりセンサーごとにレポートを作成できます。複数センサーのレポートも一括で作成できます。

レポート期間、データの平均化間隔、グラフやデータテーブルをレポートに含めるかなどを設定可能です。

センサー数が多い場合は複数PDFとして保存されます。また、データテーブルはCSVやXMLファイルとして別保存もできます。
レポートの作成方法
レポートは、レポートに含めるセンサーや記載内容を設定した「レポートオブジェクト」を用意し、実行することで作成できます。
「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」レポートを作成
このレポートオブジェクトはデフォルトで用意されているため、すぐに作成できます。
作成手順
まずは先月、一か月のレポートをPDFで作成します。
- メインメニュー「レポート」をクリック

- レポートオブジェクト「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」をクリック

- 「今すぐ実行」タブで「クイック選択範囲」の「先月」ボタンをクリック

- 「開始日」と「終了日」が先月の1日から今月の1日になったことを確認
- 「出力ファイル形式と配信先」で「PDF およびデータファイルを作成して保存」をチェック
【ヒント】「レポートをHTML形式で参照」をクリックすると、PDFではなくHTMLでレポートを表示できます。

- 「レポート実行」ボタンをクリック
バックグラウンドでレポート作成が開始され、完了するとチケットが発行されます。

クリックするとチケットリストで確認できます。

レポートの確認方法
作成されたPDFレポートを確認します。
- レポートオブジェクトに戻り「保存したレポート」タブをクリック
- 作成されたレポートがリストに表示されるのでクリック

PDFレポートが表示されます。
【注意】最多/最少帯域使用センサーのレポートはデータファイル(.csv、.xml)では出力できません。
平均化間隔を調整する
デフォルトの「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」レポートは、平均化間隔が5分です。
元データを5分間隔で平均化した値を使って作成されます。
設定を変更すると、1分平均や60分平均のデータでレポートを作成できます。
- レポートオブジェクト「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」をクリック
- 「設定」タブをクリック

- 「レポートテンプレート」で、希望の平均化間隔のテンプレートを選択:
・上位 100 最高および最低(データファイル利用不可能):上位 100 最高および最低(1 分平均)
・上位 100 最高および最低(データファイル利用不可能):上位 100 最高および最低(5 分平均)
・上位 100 最高および最低(データファイル利用不可能):上位 100 最高および最低(60 分平均)

- 「保存」をクリック
平均化間隔 が変更されました。
特定のセンサーだけをレポートの対象にする
デフォルトの「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」レポートでは、すべてのトラフィックセンサーが対象です。
これを特定のグループやデバイスのセンサーだけに絞る方法を説明します。
デフォルト設定の解説
デフォルトでは、すべてのトラフィックセンサーをレポートに含めるようになっています。
レポート設定の「センサーを手動で選択」タブをでは「Root」オブジェクトが選択されています。

これはPRTGの階層構造における「Root」配下のすべてのセンサーを対象とする設定です。 ただし、このままではPingなどのトラフィック以外のセンサーも含まれてしまいます。
そこで「設定」タブの「含まれるセンサー」→「タグによるセンサーを含める」フィルターを使って、トラフィックセンサーのみを対象に絞り込んでいます。
デフォルトで「bandwidthsensor」というタグが指定されており、このタグはトラフィック監視センサーに自動的に付与されています。

つまり、Root配下の全センサーを選択しつつ、「bandwidthsensor」タグを条件にフィルタリングすることで、トラフィックセンサーのみをレポート対象にしています。
特定のグループやデバイスのみをフィルタリングする
特定のグループやデバイスで対象をフィルタリングします。
ここではデフォルトのレポートオブジェクトをクローンして設定を変更します。
- レポートオブジェクト「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」のチェックボックスをオン
- 右に表示された「クローン」アイコンをクリック

上位 100 最多/最少帯域使用センサー のクローン」が作成されます。
- 作成したクローンをクリックし「センサーを手動で選択」タブを開く
- 「Root」オブジェクトを削除

- 右ペインから対象グループまたはデバイスをドラッグ&ドロップ

- ここでは「東京本社」グループを追加

これで「東京本社」配下のトラフィックセンサーのみを対象とするレポートオブジェクトが完成します。
「設定」タブでレポート名をわかりやすく変更しておくとよいでしょう。
グループの代わりにデバイス単位、またはセンサー単位で追加することも可能です。複数のグループ・デバイスを組み合わせることもできます。
ポートごとの帯域幅の使用状況レポートを作成
ポートごとの帯域幅をレポートするオブジェクトはデフォルトでは存在しません。新規にレポートオブジェクトを作成します。
ここでは、監視中のすべてのセンサーのグラフを中心としたレポートを作成します。
レポートオブジェクトの新規作成
- メインメニュー「レポート」タブをクリック
- レポートオブジェクトリスト画面右の「+」アイコン→「レポートの追記」をクリック

新しくレポートオブジェクトが作成され、設定画面が表示されます。

まず、「レポート名」に適切なレポート名を設定します。
続いて「レポートテンプレート」を設定します。
レポートテンプレート
選択したテンプレートによってレポートの内容が変わります。「xx間隔」は平均化間隔です。

主なテンプレートの説明:
1.データテーブル付きのグラフ(データファイル利用可能):グラフ xx間隔、テーブル xx間隔
PDFにグラフとデータテーブルを記載。データは.csv、.xmlでも保存可能。
2.データテーブルのみ(データファイル利用可能):データテーブル(xx間隔)
PDFはデータテーブルのみ。データは.csv、.xmlで保存可能。
3.グラフのみ(データファイル利用不可能):グラフのみ(xx間隔)
PDFにグラフと、平均、最小、最大値などの統計情報のみ記載。データのファイル保存は不可。
平均化間隔の考え方
レポート期間に対して平均化間隔が短すぎると、データテーブルが膨大になり処理に時間がかかる、PRTG全体に負荷がかかるなどの問題が出ます。
グラフも同様で、描画が詳細になりすぎて可読性を損なう場合があります。
例:1か月のレポートを「1分間隔」で作成 → 1センサーあたり43,200行のテーブルが生成され、処理が非常に重くなる可能性あり。
なお、各センサーの「期間ごとのタブ」で表示している平均化間隔は次の通りです。
レポートテンプレート選択の目安にしてください。
・期間「2日」:5分平均
・期間「30日」:1時間平均
・期間「365日」:1日平均
この記事では「グラフのみ(データファイル利用不可能):グラフのみ(1 時間間隔)」テンプレートを使用します。
「ページ形式」は「DIN A4」を指定します。

レポート対象センサーの設定
ここでは、すべての「SNMP トラフィック」センサーをレポートに含めます。
前述の「上位 100 最多/最少帯域使用センサー」レポートのデフォルト設定と同様です
- 「「タグによるセンサーを含める」フィルター」 の「+」から「bandwidthsensor」を指定


- その他はデフォルト設定のまま「作成」ボタンをクリック
- 自動的に「センサーを手動で選択」タブに移動

- 右ペインから「Root」オブジェクトを左にドラッグ&ドロップ

これで、「Root」配下のすべてのセンサーのうち「bandwidthsensor」というタグを持つものだけがレポートの対象になります。
レポートの作成
- 「今すぐ実行」タブをクリック
- 今回はテンプレートを「グラフのみ(1時間間隔)」に設定しているので「先月」を指定
- 「出力ファイル形式と配信先」で「PDF およびデータファイルを作成して保存」を選択

- 「レポート実行」をクリック
完了すると「保存したレポート」タブで確認できます。

データをCSVやXMLでエクスポート
「(データファイル利用可能)」と記載のあるテンプレートを選択すると、データをエクスポートできます。

エクスポート設定
- レポートオブジェクトの「設定」タブに移動
- 「データファイル」の「CSV/XML 形式のファイル」でファイル形式を選択
この記事では「.csv ファイルのみを含める」をチェックし.csvファイルでエクスポート


- 「保存」ボタンをクリック
エクスポートの実行
- 「今すぐ実行」タブからレポートを実行
- 完了後、「保存したレポート」タブからCSVをダウンロート可能

【注意】
PRTGのUIをHTTPSに設定し、インストール時の自己署名証明書のまま使用している場合、Chrome/EdgeではCSVをダウンロードできません。
その場合はFirefoxを使用するか、PRTGサーバー内の保存フォルダから直接取得してください。
C:\ProgramData\Paessler\PRTG Network Monitor\Report PDFs\<レポートオブジェクトID>
「レポートオブジェクトID」は保存したレポートのレポート名に記載があります。

発展的な使いかた
生データのエクスポート
レポート機能ではなく、各センサーの「履歴データ」タブから生データをエクスポートできます。

- 「平均間隔」で「間隔指定なし(生データ表示)」を選択
- 「出力形式」で「.csv ファイル」を選択

【注意】生データ出力範囲は最大40日です。項目「開始」と「終了」で選択した範囲が40日を超えないようにしてください。
【注意】CSVファイルの文字コードはBOMなしのUTF-8です。アプリによっては、日本語表示のためにBOM付きで保存し直す必要があります。
APIでエクスポート
履歴データのCSVやグラフ画像はAPI経由で取得可能です。
PowerShellやcurlを用いたスクリプトで自動化することもできます。
APIについてはメーカーのオンラインマニュアルをご参照ください。
PRTG Manual: HTTP API
https://www.paessler.com/manuals/prtg/http_api
PRTG Manual: Historic Data
https://www.paessler.com/br/manuals/prtg/historic_data
まとめ
PRTGでポート(インターフェイス)の帯域幅の使用状況を監視し、結果をPDFやCSVレポートとして出力できました。
PRTGはサーバー、ネットワーク機器、仮想環境、クラウドまでを一元監視できるオールインワンソリューションです。
トライアル版やフリー版もご用意していますので、ぜひご活用ください。